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遺産分割協議のQ&A

Q1)所在のわからない相続人がいるため、遺産分割協議を行うことができません。こういった場合は、どうすればいいのでしょうか?

A1)現在の住所が分からずに連絡が取れないという場合には戸籍を辿って、現在の戸籍の附票(住所が載っているもの)を取り寄せて今の住所を探し出すことができます。
現在の住所が分かっても、そこに住んでいない等連絡が取れない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。選任されたこの財産管理人は家庭裁判所の許可を得た上で、不在者の代わりに遺産分割協議に参加します。
この他、行方不明の状態が7年以上続いているような場合には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てて、戸籍上死亡したものとしてもらう方法もあります。
船舶事故や災害等に遭って、その後1年以上生死不明の状態にある場合にも、失踪宣告の申し立てができます。

Q2)父の遺産の分割協議を終えたあとに、父の子と名乗る人物が現れました。戸籍を調べてみると、確かに父が認知した子でした。分割協議は一からやり直さなければなりませんか?

A2)相続人を一人でも欠いた遺産分割協議は「無効」ですから、やはり遺産分割協議はやり直さなければなりません。
なお、被相続人(当該事例では父)の死亡後に、認知の訴えや遺言により認知され、相続人になるケースもあります。
この場合、既に遺産分割協議が終了しているときには、改めて遺産分割協議をするのではなく、認知された子の相続分に応じた価額を支払えばよいことになっています。

Q3)相続人に未成年者がいます。どのように遺産分割協議をすればよろしいでしょうか?

A3)未成年者は行為能力がありませんので、未成年者自らが遺産分割協議することはできません。
未成年者の親は、親権者として、未成年の子を代理する権限がありますが、親と未成年の子が両方とも相続人である場合には、親は未成年者を代理することはできません(民法第826条)。
つまり、親が、その未成年の子とともに遺産分割の協議に参加する場合には、民法第826(利益相反行為)の規定により特別代理人の選任を要します。
どういうことかと言いますと、母親の取り分が増えると、その分子どもの取り分は減る、という関係にありますから、母親が子どもの代理人になるのは子どもの権利を守る観点から好ましくないということです。
また、同じ者の親権に服する未成年者が2人以上いる場合には、それぞれ特別代理人の選任を必要とします。子と他の子との利益が相反するからです。
特別代理人は子の住所地の家庭裁判所に選任を申し立てます。申立に必要な書類は下記のとおりです。

・申立書1
・申立人(親権者)、子の戸籍謄本各1
・特別代理人候補者の住民票の写し又は戸籍附票
・利益相反行為に関する書面(遺産分割協議書の案)

申立に必要な費用

・子1人につき収入印紙800
・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)
事案によっては、このほかの資料の提出が必要な場合もあります。

Q4)私は実印を持っていません。遺産分割協議書は認印でもいいですか?

A4)認印は使用できません。お住まいの市区町村役場に印鑑登録をして、実印を用意してください。印影の文字が判読ができないものや鮮明でないものなどは登録できません。登録できる印鑑・できない印鑑が決められていますので、詳しくは市区町村役場にお問い合わせください。

Q5)海外に住んでいる相続人がいて、印鑑証明書が取れません。どうしたらよいでしょうか?

A5)大使館や領事館で、「在留証明」や「署名証明」を取得することで、対応できます。
署名証明には複数の形式がありますが、遺産分割協議書の場合には相続人が領事館に遺産分割協議書を直接持参し、領事の面前で署名する方法が最も無難だと思われます。

Q6)遺産分割協議書は相続人の人数分つくらなければいけませんか?

A6 実務的には相続人の人数分作ることが一般的です。後々のトラブル防止のためにもそうすべきでしょう。
遺産分割協議書は、銀行預金を特定の相続人が取得する(口座の名義変更・解約)場合不動産の所有権移転登記(相続を原因)をする場合自動車の所有権移転登録する場合相続税の申告時(配偶者の税額軽減の特例を受けるときなどにも必要となる書類ですから、その分を計算して作る方がよいでしょう。

Q7)不動産と借金は長男が相続すると言う遺産分割協議書は可能でしょうか?

A7)そのような遺産分割協議書も可能ですが、借金については注意点があります。

たとえ「すべての借金は長男が相続すると協議書に記載しても、債権者にそのことを強制することはできません。
債権者は法定相続分の割合で、各相続人に返済を求める権利を持っています。
なお、債権者の了解のもとに、長男が他の相続人の借金(法定相続分相当)を債務引受することは可能です。

Q8)兄弟3人で父の遺産を相続することとなりましたが、長男である私が土地と自宅を受け継ぎ、銀行預金3000万円を二男、三男で半分ずつ分けることで合意をしております。このような場合に、遺産分割協議書を作成する必要はありませんでしょうか?

A8)後日の紛争を避けるためにも、協議の内容を明確にした書面を残したほうがよいでしょう。また、各種の遺産相続手続きにおいて遺産分割協議書の提出が必要となりますから、遺産分割協議書は作成すべきです。

例えば遺産分割協議によって不動産を相続する場合、不動産の名義変更には必ず遺産分割協議書が必要になります。

Q9)父が亡くなり、遺言書が出てきました。しかし兄弟で話し合った結果、遺言書に書かれた内容と違った遺産分割をすることに全員で合意をしました。問題はないでしょうか?

A9)遺言があっても、相続人全員の同意があれば遺言と異なる遺産分割協議は可能です。ただし、遺言による遺贈があれば、受遺者の同意も必要となりますし、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者の同意を得る必要があります。

Q10)姉と二人で亡くなった父の遺産(土地、現金)を、遺産分割協議書を作成して相続したのですが、しばらくして、別の銀行口座に現金(800万円)があることが判明いたしました。遺産分割協議はやり直しとなるでしょうか?

A10)このようなケースを想定して、専門家は遺産分割協議書に「協議後存在が判明した相続財産は○○が相続する
という文言を入れておくことが多いのが実際のところです。

さて、このような遺産分割協議後に判明した財産については、対応が二つに分かれます。
一つは、新たに判明した財産が相続人にとってそれほど重要ではなく、遺産分割協議の内容を左右するものでなければ、新たに判明した財産について、協議すれば十分です。
しかし、いったん作成した遺産分割協議書の内容に影響を与えるほどの重要な財産が判明した場合には、遺産分割協議をやり直す必要があるでしょう。

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